ワンドレス・マジック

概要

ワンドレス・マジック (杖無し魔法Wandless magic) とは魔法使いの杖を用いずに行使される魔法、あるいはその技術のことである。

Pottermoreにおいて以下のような記述がある。

魔力は、まるで炎のように、荒れ狂い、混沌とした激しく変化するものである。そのため、ウィザードは魔力を伝える際に杖を使う。 (杖無しで) 魔力を制御するためには、最高級の技術と熟練を要する。ワンドレス・マジックは、地震の中、手放しで自転車に乗るようなものである。

The hardest wizarding world spells (訳) – Pottermore

これに基づくと、本質的には魔法の行使に杖は必要ないと言える。しかし、それは非常に難度の高いことであり、杖はその易化に役立つツールであるということも示されている。

またPottermoreの別の記事でも、杖無しでの魔法は優秀な魔法使いの証であることが言及されている。他にもアフリカ大陸の魔法使いは杖を使わずに魔法を学ぶことなどが明かされている。

魔法の杖はヨーロッパで発明されたものであり、魔力の流れを導くことで魔法の精度や力の強さを高める効果があります。しかし基本的には、杖に頼らずとも高度な魔法を使いこなすことができる魔法使いや魔女が優秀さの証として持つものという意味合いが強いのです。ネイティブアメリカンの動物もどきや魔法薬調合師たちが証明してみせたように、杖を用いずとも極めて複雑な魔法を操ることは可能です。しかし、呪文や変身術は、杖なしでは非常に難しいのです。

The magic wand originated in Europe. Wands channel magic so as to make its effects both more precise and more powerful, although it is generally held to be a mark of the very greatest witches and wizards that they have also been able to produce wandless magic of a very high quality. As the Native American Animagi and potion-makers demonstrated, wandless magic can attain great complexity, but Charms and Transfiguration are very difficult without one.

History of Magic in North America – Pottermore

またこれに関連してJ. K. R.はTwitter上で以下のTweetからはじまる会話を行っている。

関連事項を、抜粋及び翻訳すると以下のようになる。

J.K. Rowling: はい、ほとんど全てのウィザードが杖を使っています。より簡単に魔力を導くことができるからです。ワンドレス・マジック (杖無し魔法) は高度で才能を必要とします。

Molly Cook: では箒についても同じことが言えるのでしょうか?高度なウィザードは飛ぶのに箒を必要としない?

J.K. Rowling: その通りです。杖や箒はchannel magicのためのツールです。最高級の才能をもつウィザードはそれらを必要としません。

o0MRG0o: 不必要なのに、その才能あるウィザードは杖の使用にメリットを感じるのですか?

J.K. Rowling: はい、多くのウィザードはcorrect wandを用いてより精度 (precise) の高い魔法を行使します。このため杖は広く用いられているのです。

m/a/u/r/o: 杖を持たない魔法使いと、杖を持った魔法使いが決闘をした場合、誰が勝つでしょうか?

J.K. Rowling: 個人の力量に依ります。例えば杖ありのゴイルは杖無しのダンブルドアに負けるでしょう。普通ウィザートは決闘に杖を持っていくでしょう。

このTweetsとPottermoreの記述から、魔法を使うということは、魔力を制御し意図した方向性の効果を実現するものであるということがわかる。そして、魔力の制御を簡単にするために、魔力を通す道具として杖を使うということがわかる。才能をもった魔法使いは杖を用いずともある程度の制御された魔法を行使することができるが、杖を使った方が簡単により制御された、意図した通りの魔法を行使できるため、杖を使わない理由はない。

他にも幼少期の魔法使いは、その感情によって魔法を使ってしまうことがある。例えば、ハリー・ポッターやネビル・ロングボトムの例が原作では示されている。彼らはこのとき、杖を使っていなければ、呪文も唱えているわけではない。

使用者

この項目では、幼少期に意図せず発動したワンドレス・マジックの例は除外し、意図して行使したもののみを示す。また、映画版のハリー・ポッター・シリーズもどれほど信頼できるか不明なため慎重に扱う。

アルバス・ダンブルドア

上で引用した文章中でJ. K. R.が直接言及したように、ダンブルドアは杖無しで、それも決闘に足る魔法を使うことができる。ただ、小説中では杖無しで魔法を行使したと確信できる描写はあまりない。

小説「ハリー・ポッターと賢者の石」では、杖無し魔法で飾りつけを変えた可能性はあるが、毎年使われる垂れ幕なのだからあらかじめそのような魔法がかかっていて、手をたたくのはそれのトリガーとなっているだけという可能性もある。

ダンブルドアが手をたたいた。次の瞬間グリーンの垂れ幕が真紅に、銀色が金色に変わった。

Rowling, J.K.. Harry Potter and the Philosopher’s Stone

映画版の「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」では、アレスト・モメンタムを唱える際には杖を使っていないが、小説版では杖を使用している。

「あんなに怒っていらっしゃるのを見たことがない。あなたが落ちたとき、競技場に駆け込んで、杖を振って、そしたら、あなたが地面にぶつかる前に、少しスピードが遅くなったのよ。」

Rowling, J.K.. Harry Potter and the Prisoner of Azkaban

映画版「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」では、杖無し魔法で炎のゴブレットの箱を取り払ったり、代表選手選出のシーンで大広間の明かりを消したりしているが、小説版ではいずれも杖を使用している。

ここでダンブルドアは杖を取り出し木箱のふたを三度軽く叩いた。ふたは軋みながらゆっくりと開いた。 (…) 一見まるで見栄のしない杯だったが、ただその縁から溢れんばかりに青白い炎が躍っていた。

(…)

ダンブルドアは杖を取り大きくひと振りした。とたんにくりぬきカボチャを残して後のろうそくが全て消え部屋はほとんど真っ暗になった。

Rowling, J.K.. Harry Potter and the Fire of the Goblet

ヴォルデモート

ヴォルデモートは幼少期より、突発的なものではなく、意図的に魔法を使い始めていた。この時点でヴォルデモートは杖を使うということを知らないため、杖無しで魔法を行使していたのは間違いないだろう。

「物を触らずに動かせる。訓練しなくとも、動物に僕の思いどおりのことをさせられる。」
(…)

リドルは、洋箪笥とダンブルドアを交互に見つめ、それから貪欲な表情で杖を指差した。 「そういう物はどこで手に入れられますか?」

(…)
「あの者の力は、きみも聞いたように、あの年端もゆかぬ魔法使いにしては、驚くほど高度に発達しておった。そして――もっとも興味深いことに、さらに不吉なことに――リドルはすでに、その力を何らかの方法で操ることができるとわかっており、意識的にその力を行使しはじめておった。きみも見たように、若い魔法使いにありがちな、行き当たりばったりの試みではなく、あの者はすでに、魔法を使ってほかの者を恐がらせ、罰し、制御していた。」

Rowling, J.K.. Harry Potter and the Half-Blood Prince

ゲラート・グリンデルヴァルト

先のダンブルドアの項目で見てきたように、映画版では杖無しでの魔法の行使が多用される。グリンデルヴァルトの杖無し魔法の根拠も映画版の描写のみになるため、信頼性に欠けるものの、ダンブルドアに匹敵すると形容される魔法使いならば杖無しで魔法を使えても全くおかしくないだろう。

映画「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」において、いくつかのシーンで杖無しで魔法を使っている。

1つは、ニュート・スキャマンダーの旅行カバンを取り上げ拘束するシーンで、このとき両手に杖は見られない。

もう1つは、尋問の際にオブスキュラスを見せるシーンである。このときは杖を机の上に置いている。

全体的に、ウィンガーディアム・レビオーサのようなレビテーション魔法やアクシオのような召喚魔法を用いていた。

デルフィーニ

脚本版の「ハリー・ポッターと呪いの子」におけるデルフィーニも杖無しで魔法を使うシーンがある。

タイム・ターナーで過去に戻ったとき、彼女の杖はセドリック・ディゴリーに奪われている。アルバス・セブルス・ポッターとスコーピウス・マルフォイの杖も既に彼女自身が折っているため、それを使うことはできない。そのため、さらに過去に遡ったとき、何らかの方法で杖を得ていなければ、ハリー・ポッターから杖を奪うまで杖無しで魔法を行使していることになる。正確なところは、実際に舞台の演出を見てみなければわからないが、描写から判断する限りは杖は持っていなさそうである。

デルフィー「お前はヴォルデモート卿ではない。インセンディオ!」
デルフィーは手から稲妻を放つ。ハリーが応戦する。
ハリー「インセンディオ!」
(…)
デルフィーは、もう一方の手で、開こうとしている二つのドアに稲妻を放つ。
デルフィー「ポッターだな。コロポータス!」
(…)
再び攻撃にかかろうとするが、デルフィーのほうがずっと強い。ハリーの杖はデルフィーのほうに飛んでいく。武器を奪われ、ハリーはなす術がない。

Rowling, Thorne and Tiffany – Harry Potter and the Cursed Child (Special Rehearsal Edition Script)

このシーンからは、インセンディオ、コロポータス、エクスペリアームスを杖無しで使っていることがわかる。また、杖無しの状態でハリーに決闘で勝利するほどのようだ。

J. K. R.の話に出てきた例では、杖無しのダンブルドアと杖ありのゴイルという極端なケースが挙げられていたため、どれほどの差があるのかははっきりとしていなかった。ハリーの決闘の腕は、ゴイルとは比較にならないだろう。それでもデルフィーには圧倒されているので、杖無しで魔法を使える者の才覚は際立ったものがあるのだろう。

パーシバル・グレイヴス (推定)

映画「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」において、グリンデルヴァルトが彼に変装していたが、その状態で杖無し魔法を使っていた。もしグレイヴスが杖無し魔法を使えないのであれば、周囲から疑いの目を向けられていたであろう。そのため、彼も杖無し魔法を使えると考えられる。