閉心術

概要

閉心術またはオクルメンシー (Occlumency) は他者からの開心術 (レジリメンス、Legilimency) などによる心への侵入を妨害するための魔法による防御である。この術の使用者は閉心術士 (Occlumens) と呼ばれる。開心術による思考や感情の探索を妨げることができるのは、見るべき感情や思考がそこには何もないからである。

「『閉心術』だ、ポッター。外部からの侵入に対して心を防衛する魔法だ。世に知られていない分野の魔法だが、非常に役に立つ」

‘Occlumency, Potter. The magical defence of the mind against external penetration. An obscure branch of magic, but a highly useful one.’

「さて、『閉心術』だ。君の大事な名付け親の厨房で言ったように、この分野の術は、外部からの魔法による侵入や影響に対して心を封じる」

Rowling, J.K.. Harry Potter and the Order of the Phoenix

原作その他媒体の記述

閉心術の習得方法

原作から、閉心術の習得に当たって必要な事項が述べられている部分を抜粋する。

「君がどの程度抵抗できるかやってみよう。君が『服従の呪い』に抵抗する能力を見せたことは聞いている。これにも同じような力が必要だということがわかるだろう……。」(…)
「気持を集中するのだ。頭で我輩を撥ねつけろ。そうすれば杖に頼る必要はなくなる」(…)
「心を空にするのだ、ポッター。 (…) すべての感情を棄てろ…… (…) もっと克己心が必要だ……」(…)
「毎晩寝る前、心からすべての感情を取り去るのだ。心を空にし、無にし、平静にするのだ。わかったな?」(…)
「――二ヵ月以上も特訓をしたからには、少しは進歩するものと思っていたのだが」

Rowling, J.K.. Harry Potter and the Order of the Phoenix

これらの記述から、閉心術のためには、心から感情を取り除き無にすること、心への侵入を拒絶しようとする意思の強さが必要とされていることがわかる。これは普段からそのような心になるような練習をする必要がある。そして、少なくとも2か月を費やせば何かしらの結果が得られるのが一般的と考えられていることがわかる。これはドラコ・マルフォイがベラトリックス・レストレンジに閉心術の訓練を受けることができた夏休みの間に、閉心術を習得できていたことからも裏付けられる。

閉心術の習得には、あるタイプのものの見方、精神性が必要とされる。ドラコ・マルフォイはこの手の才能を持ち、ハリー・ポッターは持っていなかったことが、2005年のJ. K. R. のインタビューで言及されている。

ドラコは閉心術の才能があった。しかしハリーにはなかった。ハリーの問題点は、彼は常に感情を表層に出し過ぎており、(開心術によって) ダメージを受け過ぎていた(受けやすかった?)。しかし、ハリーは自分に何が起こっているかという感覚を理解してはいた。ハリーは感情を抑えることのできるタイプではなく、それに直面したとき自分の感情に正直で、それを鎮めることができず、その記憶を抑えることはできなかった。しかし、ドラコは自分の経験や感情を閉じ込めることのできる才能があり、常にそれを行っていた。

開心術をかけられたときの挙動の違い

まず、ハリー・ポッターが初めて閉心術を使おうと試みたときの描写を引用する。

「レジリメンス!」 ハリーがまだ抵抗力を奮い起こしもせず、準備もできないうちに、スネイプが攻撃した。目の前の部屋がぐらぐら回り、消えた。切れ切れの映画のように、画面が次々に心を過った。そのあまりの鮮明さに目が眩み、ハリーはあたりが見えなくなった。 (…) だめだ。チョウの記憶がだんだん近づいてくると、ハリーの頭の中で声がした。見せないぞ。見せるもんか。これは秘密だ――。ハリーは膝に鋭い痛みを感じた。スネイプの研究室が再び見えてきた。ハリーは床に膝をついている自分に気づいた。片膝がスネイプの机の脚にぶつかって、ズキズキしていた。ハリーはスネイプを見上げた。杖を下ろし、手首を揉んでいた。そこに、焦げたように赤く爛れたみみず腫れがあった。
「針刺しの呪いをかけようとしたのか?」 (…)
「いいえ」(…)
「違うだろうな。(…) 君は我輩を入り込ませすぎた。制御力を失った。(…) 初めてにしては、まあ、それほど悪くなかった。(…) 君は大声を上げて時間とエネルギーをむだにしたが、最終的にはなんとか我輩を阻止した。」

Rowling, J.K.. Harry Potter and the Order of the Phoenix

閉心術に対して未熟なものが開心術をかけられた場合、自身の制御を失い、抵抗するにしても無意識に声をあげたり魔法をかけたりすることがあるようである。この抵抗は、上述したように、服従の呪文 (インペリオ) をかけられた際に見られる描写と類似している。また、暴露された記憶を鮮明な形で自分自身でも見ることになるようである。

「先生は僕の見たものを全部見たのですか?」答えを聞きたくないような気持で、ハリーが聞いた。「断片だが」

Rowling, J.K.. Harry Potter and the Order of the Phoenix

またその際、現実の視覚情報を全く得られていないようである。

次にある程度の進歩がみられたときの記述を引用する。

スネイプが杖を上げた。「一――二――三――『レジリメンス!』」 百有余の吸魂鬼が、校庭の湖を渡り、ハリーを襲ってくる……ハリーは顔が歪むほど気持を集中させた……だんだん近づいてくる……フードの下に暗い穴が見える……しかも、ハリーは目の前に立っているスネイプの姿も見えた。ハリーの顔に目を据え、小声でブツブツ唱えている……そして、なぜか、スネイプの姿がはっきりしてくるにつれ、吸魂鬼の姿は薄れていった……。 ハリーは自分の杖を上げた。「プロテゴ!」

Rowling, J.K.. Harry Potter and the Order of the Phoenix

この記述から、もし閉心術を完全に会得したならば、開心術をかけられたとしても自身のコントロールを失わず、鮮明な記憶に目が眩まされることもなく現実を見続けることができるようになる、すなわち開心術の影響を受けなくなると考えられる。

これについては別の記事でもう少し詳細に考察した。

難易度・使用者

閉心術はホグワーツにおける教育のカリキュラムには入っていない。原作で明確にこの術を使用しているのは、セブルス・スネイプとドラコ・マルフォイ、ヴォルデモートである。また、ホラス・スラグホーンもアルバス・ダンブルドアから優れた閉心術士と言われている。また、直接的な描写こそないものの閉心術の教育を行っている又は行えるという描写が存在することから、ベラトリックス・レストレンジ、アルバス・ダンブルドアも閉心術に優れていると考えられる。

また、J. K. R. によればゲラート・グリンデルバルトもこの術に優れている。

ハリー・ポッターはこの術の習得に失敗している。

習得しているのはほぼ優秀な魔法使いに限られており、閉心術は非常に難易度の高い術であるといえる。Pottermoreによれば、閉心術は守護霊の術と同等と見做されるほどの難易度とされている。