リトル・ハングルトン墓地におけるヴォルデモートの台詞に対する疑問点

小説「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」終盤に、リトル・ハングルトン墓地においてヴォルデモートが発した台詞の中に、いくつか疑問に思う点が存在した。それはその場に欠けていた”6人のデス・イーター”、そして”レストレンジたち”という表現である。ここでは、この2点についてそれが誰を指していたのかを考察する。

Missing six death eaters

1995年6月の復活時点におけるヴォルデモートの認識では、デス・イーター達のうち少なくとも3名が死亡、1名が裏切り、1名が逃亡、1名最も忠実なものが合流し再び仕えている、という状況であった。

「そしてここには、6人のデス・イーターが欠けている… 3人は俺様の任務で死んだ。1人は臆病風に吹かれて戻らぬ… 思い知ることになるだろう。1人は永遠に俺様の下を去った… もちろん、死あるのみ… そして、もう1人、もっとも忠実なる下僕であり続けた者は、すでに任務に就いている。」

“And here we have six missing Death Eaters… three dead in my service. One, too cowardly to return… he will pay. One, who I believe has left me forever… he will be killed, of course… and one, who remains my most faithful servant, and who has already reentered my service.”

Rowling, J.K.. – Harry Potter and the Goblet of Fire

ほぼ判明している人物

死亡した2人

死亡した3人のうち、1人はほぼ間違いなくエバン・ロジエールEvan Rosierで、1980年にオーラーとの戦闘で死亡した。もう1人はウィルクスでやはり1980年にオーラーとの戦闘で死亡したとシリウス・ブラックとアラスター・ムーディが証言している。

「スリザリン生の中で、後にほとんど全員が『死喰い人』になったグループがあり、スネイプはその一員だった。 (…) ロジエールとウィルクス――両方ともヴォルデモートが失墜する前の年に、『闇祓い』に殺された。レストレンジたち――夫婦だが――アズカバンにいる。エイブリー (…)」

Rowling, J.K.. – Harry Potter and the Goblet of Fire

逃亡した1人

逃亡したデス・イーターはイゴール・カルカロフと考えられる。ヴォルデモート復活後、召集に応じず逃亡したことが判明している。

「カルカロフは逃げ出した。腕についた闇の印が焼けるのを感じてな。」

Rowling, J.K.. – Harry Potter and the Goblet of Fire

そして、1年間の逃亡後に殺害されたのが確認されている。

「それに、イゴール・カルカロフの死体が、北のほうの掘っ建て小屋で見つかった。その上に闇の印が上がっていたよ――まあ、正直なところ、あいつが死喰い人から脱走して、一年も生きながらえたことのほうが驚きだがね。」

Rowling, J.K.. – Harry Potter and the Half-Blood Prince

永遠に去った1人

裏切り、永遠に去ったとヴォルデモートが認識している可能性のある人物はセブルス・スネイプである。

ヴォルデモートは、これまでにクラウチJr およびワームテールから得た情報に基づき、スネイプが自身の消滅後も十数年ホグワーツで教授として働いていたことを知っているはずである。

「私はあの方に命じられ、ホグワーツ魔法魔術学校にいた。アルバス・ダンブルドアをスパイするよう私にお望みになったからだ。」
“I was where he had ordered me to be, at Hogwarts School of Witchcraft and Wizardry, because he wished me to spy upon Albus Dumbledore.”

Rowling, J.K.. – Harry Potter and the Half-Blood Prince

そして、後にベラトリックス・レストレンジから詰問されたように、ヴォルデモートを捜索しなかったことや、復活直後リトル・ハングルトンへの召集に応じなかったこと、ダンブルドアのもとで賢者の石の防衛に協力していたことなどから考えて、ヴォルデモートはスネイプが裏切ったのだろうと考えたと思われる。

忠実な1人

これはバーテミウス・クラウチ・ジュニアのことである。この忠実な1人は既にヴォルデモートに再び仕え任務を遂行中であると発言している。このとき、ヴォルデモートの命を受けて動いていたのはクラウチJr. とピーター・ペテグリューであるが、この場に居ない人物を指しているので、該当するのはクラウチJr. のみである。

死亡した1人

最後の1人は原作ではっきりと明言されているわけではないが、レギュラス・ブラックのことであると思われる。その他の候補としては、未知のデス・イ-ター、あるいはクィリナス・クィレルが挙げられる。これらの候補者についてその可能性を検討してみる。

レギュラス・ブラック

レギュラス・ブラックは1979年に行方不明(実際には死亡)になっている。

(参考:レギュラス・ブラックの死に対する認識について)。

クィリナス・クィレル

クィレルは、1990-1991年の間にアルバニアにおいてヴォルデモートと遭遇し、彼に仕えるようになった。その後、ホグワーツから賢者の石を奪取する任務の途中で死亡した。そのため、彼が死亡した1人として数えられることがある。しかし、彼は該当しないと思われる。

リトル・ハングルトンの墓地におけるデス・イーター達の記述を見ると、デス・イーターが組んでいた円陣には定位置があったように思われ、そしてヴォルデモートは誰がどの位置を占めるのかを把握していたようである。

それから後ろに退き、無言のまま全員が輪になって立った。 (…) しかし、輪には切れ目があった。まるであとから来る者を待つかのようだった。 (…)

ヴォルデモートは先へと進み、マルフォイとその次の男の間にある空間を――優に2人分の大きな空間を――立ち止まってじっと見つめた。

「レストレンジたちがここに居るはずだった。」

Rowling, J.K.. – Harry Potter and the Goblet of Fire

しかしクィレルは1981年以前に仕えていたわけではない。そのため、円陣に彼の位置が用意されているはずがないと思われる。さらに、クィレルはそのすぐ後の台詞で、愚かで騙されやすい魔法使いと言及されているので、ヴォルデモートに任務で死亡したデス・イーターとは考えられていないだろう。

まとめ

6人のデス・イーターの内訳は以下のようになる。

死亡した3人 ロジエール、ウィルクス、ブラック
逃亡した1人 カルカロフ
永遠に去った1人 スネイプ
忠実であった1人 クラウチ

3人のレストレンジ

リトル・ハングルトンの墓地においてヴォルデモートが行なった、かつてのデス・イーター達に対する演説において、レストレンジ達の忠誠心を称賛するシーンがある。そこには2人分のスペースと記述されているが、デス・イーターにレストレンジはロドルファス、ベラトリックス、ラバスタンの3人いるはずである。また、日本語版では「あの2人はアズカバンに葬られている」となっている。

ヴォルデモートは先へと進み、マルフォイとその次の男の間にある空間を――優に2人分の大きな空間を――立ち止まってじっと見つめた。

「レストレンジたちがここに居るはずだった。(…) しかし、彼らはアズカバンに閉じ込められている。忠実な者たちだった。私を見捨てるよりはアズカバン行きを選んだ……アズカバンが開放されたときには、レストレンジたちは最高の栄誉を授かるだろう。」

Voldemort moved on, and stopped, staring at the space—large enough for two people—that separated Malfoy and the next man.

“The Lestranges should stand here,” said Voldemort quietly. “But they are entombed in Azkaban. They were faithful. They went to Azkaban rather than renounce me… When Azkaban is broken open, the Lestranges will be honored beyond their dreams.

Rowling, J.K.. – Harry Potter and the Goblet of Fire

3人ともロングボトム夫妻襲撃事件でアズカバンに同時に収監されており、また、この時点で全員生存している。ベラトリックスは最終巻まで登場し続け、ラバスタンも小説「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」における魔法省神秘部の戦いに参加している。ロドルファスも魔法省神秘部の戦いに参加した上に、「ハリー・ポッターと死の秘宝」における7人のポッター作戦中、トンクスに撃退された描写がある他、「ハリー・ポッターと呪いの子」においても言及されている。

そのためこのときの台詞を素直に受け止めると整合性に問題が生じるため、どのような可能性があるか検討する。

仮説1: まだデス・イーターではなかった者がいた

ロドルファスあるいはラバスタンのどちらかが、デス・イーターではなかったという可能性がある。映画版では両者共に闇の印を持っている。これは、ヴォルデモート復活後に闇の印をもらったと考えれば良い。

ラバスタンの生年月日は不明である。しかし、1981年末~1982年のロングボトム夫妻襲撃事件の裁判のときには、10代と言及されたクラウチJr. に対して彼は特に言及されておらず、既に20代であったと思われるため、正式にデス・イーターとして参加しててもおかしくない年齢ではある。

ただ、ハリー・ポッターの台詞から、リトル・ハングルトン墓場の会合において空けられていた2人分のスペースはレストレンジ夫妻のものということが推測される。

「それに、忘れてならないのは、あいつが、ベラトリックスとその夫を信用していたということだ。二人とも、あいつが力を失うまで、最も献身的な信奉者だったし、あいつが消えてからも探し求め続けた。あいつが蘇った夜にそう言うのを、僕は聞いた」

Rowling, J.K.. – Harry Potter and the Deathly Hallows

そのため、どちらかといえばラバスタンがデス・イーターでなかった可能性の方が高いだろう。他の2人と同様にラバスタンはロングボトム夫妻襲撃に参加し、同様に裁判を受け、同様にアズカバンに収監された。しかしこのシーンで、(上で引いたハリーの台詞に基づくなら) ヴォルデモートはラバスタンに言及していない。さらに上のMissing six death eatersで引用したデス・イーターに関するシリウス・ブラックの台詞でも、ラバスタンは特に言及されていない。ベラトリックス・レストレンジとセブルス・スネイプは9歳ほど離れており、スネイプとほぼ同年代のラバスタンがこのグループに入れない理由はないと考えられる。

これらはラバスタンがまだ正式にデス・イーターとして加入していなかった (闇の印を貰っていなかった) から言及されなかった、と考えれば説明できる。実際に、ヴォルデモートの思想に同調していたものの、デス・イーターではなかったオリオン・ブラックやヴァルブルガ・ブラックのようなケースが存在する。

仮説2: ラバスタンの定位置は別の場所だった

もう1つの可能性は、ラバスタンの定位置はレスレンジ夫妻の隣ではなく別のところにあったため、単に描写の都合で飛ばされたというものである。あるいはレストレンジ夫妻への言及で既にレストレンジ達と言っているのでそれで済ませたと考えたのかもしれない。

ただ、忠誠心を褒め上げるシーンであるのに、忠実であり続けたラバスタンを飛ばすのは考えにくい。また同じ第4巻中で既にラバスタンのことを描写しているため、プロット変更の都合ということも考えられず、リトル・ハングルトン墓地のシーンはその前振りを拾う良い機会であったはずである。

仮説3: 2人のスペースに見えただけで実は3人分だった

ここにレストレンジ3人が入る可能性が考えられる。しかし、ヴォルデモートはそのスペースに対して「あの2人は (日本語版)」と述べている。日本語版に基づかなくとも、優に2人分のスペースと文で説明されており、ここではわざわざ誤解を招く必要もないと考えられる。加えて、仮説1で引用したハリーの台詞によるとこれはレストレンジ夫妻に向けられたものと考えられるので、ラバスタン分のスペースが含まれている可能性は低そうである。

まとめ

おそらくラバスタン・レストレンジはまだ正式にデス・イーターへ加わっていなかったと考えられる。ヴォルデモートの復活後、アズカバンから脱獄し合流した際に、正式に加わった可能性が高い。