開心術と閉心術の運用法の考察

前置き

開心術は相手の感情や記憶を読み取る術であるが、主人公であり主観的な描写が期待されるハリー・ポッターは開心術や閉心術の優れた使用者ではないため具体的な運用法や実用上の制限がはっきりと記述されていない。そこで、原作の記述から開心術の運用と、その障害となる閉心術との関係について考察する。

開心術の使用法

呪文は「レジリメンス (Legilimens)」である。開心術を用いる際には用語集のページで引用しているセブルス・スネイプのセリフで言及されているように、術者は相手と目を合わせる必要がある。また小説「ハリー・ポッターと謎のプリンス」においては、20メートルの距離で使用している描写がある。

そしてスネイプが振り向いた。二十メートルの間を挟み、スネイプとハリーは睨み合い、同時に杖を構えた。 (…) 「また防がれたな。ポッター、おまえが口を閉じ、心を閉じることを学ばぬうちは、何度やっても同じことだ」 スネイプはまたしても呪文を逸らせながら、冷笑した。

Rowling, J.K.. Harry Potter and the Half-Blood Prince

開心術士としての注意点

基本的に開心術を必要とするシーンは、決闘のとき、情報収集を行うとき、相手を尋問するときが多いと考えられる。そして、ほとんどの場合、相手に自分が開心術を用いることができるということを知らせるメリットはない。魔法世界だからといって、心への侵入に対して寛容というわけではなく、まず恐れや不快感を示される。そして、広まった情報を抑える手段は無い。

そのため、開心術を最大限有効活用しようと考えたときの重要な注意点としては、自分が開心術の使い手だと知らせてはならないという点である。

そのため、開心術をかける際には、無言呪文で行うことができるようにならなければならない。発声していては相手に開心術士であることが知られてしまうからである。さらに、決闘に開心術を役立てる際にもこれは必要な技術である。決闘の場において開心術のためにいちいち発声している暇はなく、相手に今は隙があると知らせることにもなるためである。

このような処置を講じても、相手に自分が開心術を用いていることが知られてしまう場合があるという欠点が開心術にはある。

例えば、小説「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」で、ハリー・ポッターとセブルス・スネイプの閉心術の訓練のときに用いられた開心術のように、開心術をかけられた相手もまた術者と同じように引き出された記憶をはっきりと見ている。

ただし、小説「ハリー・ポッターと賢者の石」の終盤においてヴォルデモートがハリー・ポッターの嘘を見破り賢者の石の正しい在処を読み取ったシーン、上で引用したハリー・ポッターとセブルス・スネイプの戦いのシーン、小説「ハリー・ポッターと死の秘宝」において、ヴォルデモートがルシウス・マルフォイの嘘を責めるシーンなどでは、相手に勘付かれずに開心術をかけている。また、映画「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」においても、クイニー・ゴールドスタインがニュート・スキャマンダーに気付かれずに開心術を(意図せず)かけるシーンがある。ただ、その直後には再び開心術をかけられたことには気付いたので、注意していれば感知することはできるのかもしれない。

1つの仮説としては、セブルス・スネイプがやってみせたように、意図的に深く相手の心に侵入しない限り、相手は過去の記憶をフラッシュバックして見ることはないというものである。上述した相手に勘付かれないケースはほぼリアルタイムの感情と記憶を読むものである。

閉心術士に開心術をかけた場合

閉心術は開心術に対抗する術であり非常に難易度が高い。しかし、決闘の際、開心術でこちらの手の内が読まれることはなく、尋問などに対しても秘密や本心を隠し通すことができる。

「『閉心術』に長けた者だけが、嘘とは裏腹な感情も記憶も閉じ込めることができ、帝王の前で虚偽を口にしても見破られることがない」

Rowling, J.K.. Harry Potter and the Order of the Phoenix

閉心術も最大限それを活かすためには、その術が使えるということを隠しておかなければならない類の術である。

閉心術を使う最大の理由は心、あるいは秘密を開心術士から守ることにある。そのため、自分が閉心術を使っていることを知られた場合、相手はまず閉心術を使えなくさせるように苦痛を与えるなどの方向からのアプローチを試みるであろうから、それでは秘密を守るという目的を達成することが難しくなる。また、もしスパイ活動中などであれば、閉心術を使っていることを知られた場合、使うのをやめるよう要求されるだろう。そうなってしまったら、従っても従わなくても任務は失敗となるだろう。例えば、セブルス・スネイプとヴォルデモートの場合、ヴォルデモートの開心術に対して閉心術で抵抗していることを知られたら、腹に一物あると疑われ閉心術を止めるよう求められるだろう。この場合従わなかったら殺されるか以後信用されなくなりそれはスパイ活動としては致命的で、従ったとしても、スパイ行為が露見し殺されるだろう。

閉心術は、相手に正しい情報を読んでいると思わせることが肝要である。そのため、優れた閉心術士ならば、心を覗こうとする開心術士に対して違和感を感じさせることはないだろう。つまり、閉心術が使えるからといってそのスキルを見せびらかすように、自分の記憶や感情を全て閉ざすことは賢明ではないということである。本当に隠しておくべき感情や記憶を厳選し、その他はさらけ出しておくことが望ましいと考えられる。